ヘッドガスケット交換
お疲れ様です。整備の谷地中です。今回のネタはメルセデス・ベンツのEクラス、E320(W210 M104エンジン)のヘッドガスケットの交換作業です。現車は平成9年(1998年)登録の車両ですが、生産年は平成8年(1997年)の車両で、生産から27年経過した車両です。
生産から27年経過した車両とはいえ、いまだに純正部品も社外部品も供給があるのでユーザー側、整備士側からすると安心です。
ヘッドガスケット交換に至った理由はヘッドガスケットからのクーラント漏れです。エンジン始動時にクーラントの匂いがするとの事で点検してみると…
画像の左側が6番シリンダーで、5番シリンダーの辺りからクーラントが漏れています。これはヘッドガスケットの交換が必要です。
では、ヘッドガスケット交換の作業開始です。
ヘッドカバー周辺の部品を取外して…
ヘッドカバーの取外し…。この世代のメルセデスはエンジンハーネスが非常に弱いので、無理がかからない様に慎重に作業を進めます。
タイミングチェーンケースアッパーカバーを取外して…
シリンダーヘッドを外す前に、タイミングチェーンテンショナーとタイミングチェーンレールのアンカーピンをスペシャルツールで引き抜いておかないと、タイミングチェーンとシリンダーヘッドを外せないので、あらかじめ外しておきます。この後、シリンダーヘッドを取外します。
直列6気筒、3.2リッターエンジンのシリンダーヘッドですので、非常に重量がある部品です。人力で下ろすのは危険が伴うので、エンジンクレーンを使っての取外しです。
シリンダーヘッドが外れました。新品ヘッドガスケットへの交換前にシリンダーブロック側を観察すると、6番シリンダーのピストンヘッドが、他のシリンダーより汚れています。これにはシリンダーブロックの構造上の理由があって…
シリンダーヘッドへエンジンオイルを供給する為の穴が、6番シリンダーの近傍にあるんです。直列6気筒エンジンはシリンダーヘッドが長いので、経年劣化でシリンダーヘッドに“反り”が出てきます。”反り“が出てくると、シリンダーヘッド↔︎ヘッドガスケット↔︎シリンダーブロック間の面圧が低下するのでヘッドガスケットのシール性能が低下してきます。シール性能が低下するとオイルやクーラントの侵入を防ぐ力が弱まるので、シリンダー内やシリンダー外の漏れに至ります。ですので、今回のケースもシリンダーヘッドの“反り”が主要な起因になってシール性能が低下。オイルポンプから供給される高圧のオイルに耐えきれず6番シリンダーにオイルが侵入。5番シリンダーからのクーラント漏れも誘発したと思われます。
6番シリンダーのヘッド側、燃焼室も他のシリンダーの燃焼室と比べてオイル燃焼によりカーボン汚れが酷いです。
ここから復元作業です。シリンダーヘッドを載せる前に、シリンダーブロックのトップ面とシリンダーヘッド面を軽めに研磨し、ヘッドガスケット載せて…
シリンダーヘッドを載せます。
シリンダーヘッドが載りました。ここでM104エンジンの最大の難所ともいえる、通称”コの字シール“の取付けです。
このシールを取付けるのに“コツ“がいりますが、何とか取付け完了。
ヘッドカバーも取付け完了。
サーペンタインベルトの取付けも完了。
この後、エンジン始動!エンジンオイル、クーラントの漏れ確認と作業箇所の最終チェックを行い、無事に作業完了しました。
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